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雨後のタケノコ、雨中のキノコ

更新日:2月24日




「雨後のタケノコ」という慣用句がある。似たようなものが次々と現れることをやや蔑みの意味を含めて用いる。フィンランド語にも「雨中のキノコ(sieniä sateella)」という言い回しがあり、意味は同様である。タケノコもしくはキノコが育つのは雨が降ったあとなのか、降っている最中なのか。表現に微妙な違いはあるものの、両者の生長に雨が大きな要素になる点は同じである。

 ところで「雨後のタケノコ」という慣用句を、何かが素早く育つ・伸びるという意味で使う人がいる。確かにタケノコの生長の速さには驚くのだが、「お子さん、背が伸びましたねえ。雨後のタケノコみたい」などと言われると、「ああこの人は馬鹿なんだな」と思う。

が、「雨中のキノコ」というフィンランド語には「類似品がたくさん」という意味とともに「素早く育つ」というニュアンスもある。雨中もしくは雨上がりに驚くほどの早さで姿を変えるキノコを見ると、むしろそちらのほうが実感に即している。 

 朝は何事もなかった通勤路に、帰宅時にはキノコが密集している、なんてことは珍しくない。何もない林を2~3時間も眺めていたら、キノコが芽(じゃないけど)を出し、スクスク育つ過程が見られるんじゃないかと思うほどだ。加えて似たようなものが続々と現れるわけだけでなく、さまざまな種があっというまにあちこちに顔を出す。唐突に現れるかのような姿に生長の速さを実感するのは日常的なことである。

 タケノコもまた生長は早いが、その過程を体験的に語れる人は少ないだろう。一般的には竹藪に散在するタケノコ、つまり同じようなものが次々に芽を出しているのを見て、あるいは想像する程度だろう。したがって、慣用句はやはり本来の意味で使うのが正しいのだ。


蛇足ながらキノコのフィンランド語、Sieniの慣用句に次のようなものがある。

juoda kuin sieni.

文例としては Tuo mies juo kuin sieni. といった具合。

キノコのように(酒を)飲む、という意味。Sieniにはスポンジという意味もあり、水分をたくさん吸収できることからの転用。つまり、鯨飲馬食のように、大酒のみを表す。

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