ヌークシオの概要
歴史
同地に人が住み始めたのはおおむね1500年代なかばと推測されている。ヘルシンキ市制定と同時期だが、もちろん規模は大きく異なり、村落といえるほどでもなかったようだ。1100年代には定着民がいたという説もあるが、定かではない。
ヌークシオ(Nuuksio)の地名は古代サーミ語のオオハクチョウに由来するというのが定説。いつその言葉を発せられ、どのようにして後世まで伝播してきたのかは不明だが、1920年代に公的な村の名前になった。
その後村落はしだいに拡大し、林業や牧畜で生計をたてる人が増えてきた。しかし1960年代になると、住居地や産業の場としてではない価値が認められるようになる。戦争の痛手から立ち直り、フィンランドが急激に工業化社会に変貌したのがその背景にある。
すなわちヘルシンキの大都市化が進み、首都圏住民に憩いの場=森に対する憧憬が高まってきたのである。現在でもヘルシンキ市は緑の多い町で、60年代ならさらに自然に恵まれた環境であっただろうが、元来、森の住民であるフィンランド人には十分ではなかったのだ。
そこで当初はヘルシンキ市が現在の国立公園周辺の土地を購入。広く市民に開放してきた。80年代に入るとこの動きが国政レベルになり、同地の国立公園化が検討課題となる。民間有志の熱意ある取り組みにより、1994年に31個目の国立公園としての指定を受ける。
なお、フィンランド国立公園指定制度は1956年に始まり、現在40か所。最新の国立公園は2017年6月に指定されたホッサ(Hossa=ヘルシンキから北東に600キロほど、ロシア国境に隣接)。
およそ19億年前に構成されたといわれる岩盤。実感としてはなにも理解できない。
ヌークシオ国立公園にはこんな特徴がある
・首都圏の裏庭
もともと首都圏住民のウェルネス増進を目的として整備を進めてきたので、アプローチが簡単。ヘルシンキからなら公共交通機関を使っても1時間、自家用車なら30分で自然の懐に包まれるのが大きな魅力。
・成長する国立公園
国立公園指定後も、エリアは年々拡大。当初は16平方キロメートルだったが、2016年には55平方キロメートルにまで成長。今後も微増が予定されている。
・豊富な生態系
開発が禁じられた国立公園であり、比較的気候が緩やかな南部に位置するため、動植物の数、種類が多い。鳥類は約100種類、ハイカーが出会うことはまずないが、熊・狼・山猫の生息も観測されている。なかでもモモンガの生息数はヨーロッパ最高とされている。
・地形
氷河期にフィンランド全土を覆っていた深さ3キロにわたる氷が1万年ほど前から溶け出し、ところどころに絶壁を作り出した。現在も年間2~3ミリずつ土地が隆起。岩盤の構成はおよそ19億年前。
ハイキングのメインコースであるハウッカランピに至る一体は”高台の湖地帯”と呼ばれ、海抜およそ60メートル。最高峰は西部ヌークシオのミュッリュ・マヤランピ(Mylly-Majalampi)で標高120メートル。すなわち、通常のハイキングでの高低差は40メートル程度だ。
表土は浅く3~6メートル。最深部で20メートルといわれている。そのため樹木が根を深くはることができず、大雨が降ると巨木ほど倒れやすい傾向にある。
国立公園内にはおよそ50の湖があり、地底ではおおむねつながっている。その水源は空港近くのヴァンター川で、いくつもの湖を通じてヘルシンキ湾へと注がれる。
フィンランドの四季
四季の典型的な写真を並べてみました。「日本とは異なり」、四季の移り変わりが非常にはっきりしているので、こうしたステレオタイプなイメージもあながち間違ってはいないでしょう。天候が理想的に展開した場合、4月が春、5~8月が夏、9月が秋。あとはすべて冬です。
よくある質問
・動物はいるんですか?
動植物の豊富さはヌークシオの特徴のひとつ。様々な獣、鳥類が生息しています。ハイカーが出会うことは皆無でしょうが、熊・狼・山猫の生息も確認されています。しかしハイキングコースでは相手の方が敬遠するため、潜在的にはたくさんいるリス・オコジョ・アカギツネなども目にすることはないでしょう。
・紅葉の季節はいつでしょう?
樹木の8割が針葉樹が占めるため、フィンランドで紅葉を見ることは非常に難しいことです。特に南部、中でもヌークシオに紅葉のあるはずがありません。そりゃあ、ポツポツとカエデの赤い葉を見ることあるでしょうが、日本でいうところの「紅葉」には遠く及びません。ヌークシオではシラカバやヤナギ類の黄葉に留まります。眼下一面に広がる黄葉も見応えはありますが、それを満喫するには特定の場所に行く必要があります。