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アンカー 1
名前の調べ方・覚え方

 

キノコに限らず、植物やその他生物の名前を調べる作業を”同定”といいます。別のいいかたをすると、種名の特定ということです。これはサクラ、あれはチューリップ、などと判断することですね。同定は一般的に外観の特徴をつかむことから始まりますが、キノコの場合は一筋縄ではいきません。植物でいえばバラ科なら花弁が5枚、キク科なら花弁が密集する、というように素人でもある程度の推測ができますが、キノコの姿は生長段階によって大きく異なりますし、その期間が半日単位という短さであったりもするので、「図鑑の写真とはまるで違う」ことが少なくないためです。天候によっても見た目が変わります。

では植物の同定のように、「目」「科」の特徴をつかみ、せめてグループ分けくらいはできないだろうか。

たとえばほとんどのイグチ科は傘の裏がスポンジ状なので、仲間を絞ることはできます。ではキシメジ科(マツタケやシイタケなど)はどうかというと、「形は様々で、特に共通の特徴はない」なんてことが図鑑に書いてあります。そりゃないよなあ。それじゃあ、そもそも目・科に分ける必要があるんだろうか、と思ってしまいます。

結局ひとつずつ覚えていくしかないのですが、その手順を記しておきましょう。

キノコを見つけたら、まず傘(アタマの部分)の色、形、大きさを確認します。なんてことはいうまでもなく誰でも無意識に行なっていることですが・・・・

たとえば写真左だと傘の色は赤。表面にイボ(外被膜の残り)があるからテングタケ科と推測。ここでは見えないけど、「ひだ」は白色で密であることを確認。続いて柄には「つば」があり、土に接する部分がふくらんで「つぼ」の名残がある。そこで、おお、これはまさしくベニテングタケだ、と同定できるわけです。

ベニテングタケくらい一目でわかるわい! と、ご立腹された方もいるでしょうし、いつもこんなにうまい具合に特徴をつかめるわけではありません。さらに、たとえば「ひだ」の特徴をつかんだところでキノコの名前がわかるわけではありません。あくまでも図鑑と照らし合せて探り当てるためのポイントに過ぎません。しかし、色・形等の特徴は必ず図鑑に記載されているので、識別の着眼点として覚えておく必要があるのです。

種目特定の着眼点

 

1 目で見て確かめる

(1)傘

・形
半球形、饅頭形、中高の平ら形、平らな饅頭形、円筒形、釣鐘形、じょうご(ろうと)形、円錐形、中央がくぼむ、半円形、扇形、へら形の12種類に分けるのが普通。

・表面

イボ(破片状)があるかどうか。

・色

白、黒、赤、黄、褐色、緑、紫が基本の7色。色だけで必ずしも確定できるわけではなく、これも図鑑と照らし合せるための一要素。生長に応じて変わるものも多い。
・表面

鱗片(うろこ状の突起)があるかどうか。
 細かい毛に覆われているか。
模様はどうか。繊維状、輪を描く、斑点がある、など。
・縁
条線や溝線があるか。裂けていたり波打っているか
 
(2) 傘の裏
 ・ひだか管孔か
・色

・密度

ヒダは密か疎か。 管孔の場合はその大きさ。
・乳液が出るか

主に白色の乳液が出ていればチチタケの仲間。爪などで傷つければわかりやすい。
・ひだのつき方
ひだと柄の接する部分に着目。隔生、離生、上生、湾生、直生、垂生の6種類がある。

(3)  柄
・形
こん棒状、球根状、下方に便腹状(中間部が膨らむ)、根状の4種類。
・表面の模様
 繊維状、だんだら模様、 ささくれ状、 粒点状、網目状、あばたの6種類。
 ・つばの有無
幼菌の傘とひだを保護していた内被膜の名残。柄の上部に袴状につくことが多い。

つばがないキノコもある。

・つぼの有無
幼菌時にキノコ全体を保護していた外被膜の名残。柄の下部、土に接する部分に残る。
・内部
 中身が詰まった中実か、管のような中空か。ナイフで切るとわかりやすい。
・肉質

縦に裂けるか、もろくて崩れるか。なお、「縦に裂けるキノコは食用」というのは全くあてにならない。
 ・変色性があるか

傷をつけた後に色が変わるかどうか。指で押しただけでもその部分が色濃くなるものがある。傘・ひだ・菅孔も同様。
 

個体の観察には、全体をきれいに採取することが大切。特に柄やつぼがこわれないように、ナイフなどで根元の周りから掘り起こしましょう。傘や柄を裁断することも多いので、ナイフはキノコ観察の必需品といえます。
 

2 生育環境をみる

 

マツタケが主に赤松林を生息地とするように、針葉樹を好むもの、草むらに生えるもの、あるいは倒木に密集するもの等、キノコにはそれぞれの適応地があります。日の当たる場所を好むもの、乾燥地に増えるものなど、あるていどの制限があるわけです。そのため、観測地(採取地)の環境も同定に欠かせないポイント。地質はどうか、まわりにどんな樹木が生えているかを注視しましょう。


 3 味わってみる
 

少量であれば命に別状はないとはいえ、舌がしびれるといった症状を起こすことがあるので細心の注意を払ってください。基本的には匂いをかぎ、舌先で舐めてみるだけで十分でしょう。小片をかじる場合でも、すぐに吐き出し、決して飲み込まないようにしてください。
甘い匂い、酸味、えぐみ、にがい、油のような匂い等々。これらもまた図鑑で調べるときの参考ポイントです。


 4 顕微鏡検査

 

同定が難しい場合、白い紙の上に胞子を落としてみたり、さらにはそれを顕微鏡で観察するといった方法が取られますが、これは研究者レベルですね。キノコ愛好家レベルが胞子を見たところで判定の助けになるとは思えません。肉眼で見て、触れて、それでもわからないものは宿題にしておきましょう。

 

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