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アンカー 1

分類学の基礎

 

 地球上の物体はすべて生物と無生物に分類される。そして生物は動物、植物、菌などに分類され、このうち動物は・・と深入りすると、生物とは何かといったややこしい話になり、書くほうもつらいし読んでても面白くないだろうから、簡単にいきましょう。

 とはいえ、一応それらしく書いてみると、「生物はその形質により、界・門・綱・目・科・属・種の七つの階級に分類され、個体の学名は属名と種名を並べた二名法が用いられている」なんてのが分類学の基礎です。この「七階級、二名法」自体は確立した考えとなっていますが、細部にはいろんな説があり、また研究が進むと訂正されたりします。

 たとえば最上位の階級である「界」。かつては動物界と植物界の二界説でしたが、現在では菌界・原生生物界・原核生物界を加えた五界説が有力になっています。キノコが菌類であることは別項で述べましたが、原生生物や原核生物なんてよくわからないですよね。前者はゾウリムシなどの単細胞生物、後者は乳酸菌があてはまりますが、素人が簡単に判断できるものではありません。二界説から五界説へ、というのは知識が広がったといえるでしょうが、昔の知識が覆されることもあります。

どこまで覚えればいい?

あらゆる生物は七階級に分類される。といっても、一般レベルでは「科」以下に着目すれば十分でしょう。

たとえばフィンランドの国花であるスズランならキジカクシ科スズラン属スズラン、といった具合。

 

え? スズランってユリ科じゃないの? って、いやあ困るなあ。そういう難しい話しをされると。

確かに昔はスズランはユリ科に分類されていました。今でもそう考えている人はいます。英語じゃLily of the valley、谷のユリなんて名乗ってるし。

 

しかし1990年代から被子植物についてはAPG分類という新しい手法が主流になり、科名が大きく変わったのですね。APG分類は遺伝子に基づく分類なので、同質性を証すには「より正しい」のでしょうが、素人の手には負えないのが難点です。見かけで分類していた旧来の方法だと、ある程度は判断できたのですが。

そういうわけで分類にこだわると呆然としてしまうこともあるのですが、それが面白い点でもあります。興味がわいた人は、自分で調べてみてください。多くの発見ができ、感動を覚えることもあるでしょう。

右欄に七階級分類の具体例を記しておきました。皆さんにもなじみ深く、フィンランドにも多くみられる白樺がサンプルです。

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シラカンバの分類

界 : 植物界   

光合成を行なう等の特徴。コケ・シダなどは含まれるが、キノコは菌類。

門 : 被子植物門

裸子植物と被子植物があるが、被子植物は「花」が咲くと捉えておけばいい。  

          

綱 : 双子葉植物綱

子葉が2枚。1枚の単子葉植物と区別される。ただし、生長したシラカンバを見ても判別できない。

目 : ブナ目

特徴が際立ってくるレベル。それだけに着眼点も複雑になる。動物なら、猿か人間かを判断する段階。

あ、そんなの一目でわかるか。ブナ目は8科33属。

科 : カバノキ科

6属、150種ほどに分類される。

属 : カバノキ属

世界に約40種。この段階になると、同属の共通点が直感的にわかる。するどい人なら科の段階で判断できるだろう。

種 : シラカンバ

学名:Betula platyphylla。ようやく個体名が確定。

これを人間にあてはめると、

生物 → 真核生物 → 動物界 → 脊索動物門(脊椎動物亜門)→ 哺乳類(網)→
サル目 → ヒト科 → ヒト属 →
山田太郎 (種・個体名)

もっとも、DNAが同一の「山田太郎」氏が複数いるわけじゃないので「種」とは言えないが、考え方としてはこんな感じ。

木と草の違い

 

 

ちょっと進行が固くなったので、やわらかい話でしめくくりましょう。

小学生に「木と草の違いはなあに?」と聞けば、サイズを基準にした答えが返ってくるでしょう。動植物に関心がなければ大人でも五十歩百歩でしょうか。「大きいのが木で小さいのが草」といった答え。さて正解は。

木と草を区別する基準は年輪ができるかどうか、にあります。すると低地をはうコケモモでも、年輪ができるから「木」なのだ、ということがわかります。一方、コケモモと同じような大きさでも年輪のできないイチゴは「草」なんだな、と。

研究者は木を木本(もくほん)、草(花)を草本(そうほん)と呼びますが、本サイトでは「木」および「草」とし、個体照会では見た目の感覚で樹木と草花にわけています。

しかし待てよ。竹に年輪はできないから「草」なのか? 竹は木でも草でもなく「タケ」だ、という説もあり、また植物学的には草と木に本質的な違いはない、とされたりもしているので、結局は「大きいのが木、小さいのが草」と区別するのも日常的にはむしろふさわしいのかもしれません。もっとも、一応は年輪云々のことを知ったうえでのことですが。

じゃあサボテンは? 大きいのも小さいのもあるし・・・。ああ、やさしい話にするつもりなんで、ややこしいこと言わないでください。

なお、二名法はスウェーデンの学者、カール・フォン・リンネ(1707~1778)が従来のそれを整備・体系化したもの。そのため、同氏は分類学の父と呼ばれたりする。それは知っている人も多いだろうけど、実はこの人、フィンランドと深い関係があるんですね。その話はまた別の機会に!

​     樹木       草花      

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木本・草本
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