隠花植物
地球上にはおよそ40万種の植物が生息していると推定されおり、そのうちの6割、約24万種が花を咲かせる「顕花(けんか)植物」とよばれている。サクラ、バラ、タンポポ等々、顕花植物の名前を一つも知らないという人はおるまい。
これらに対して花の咲かないものが「隠花(いんか)植物」で、約16万種類を数える。シダやコケがその範疇といえばイメージをつかめるだろうが、個別名を知らなくてもおかしくない。ワラビ、コゴミといえば思い当たる程度ではなかろうか。
さらに「よくわからないけど植物のようなもの」がある。地衣類である。厳密には植物ではないし、その存在や名称を知らなくても不思議ではない。とはいえ、この「植物みたいな生物」=地衣類、は身近に見受けられるし、20年くらい前までは「隠花植物」に分類されることも普通だったのでここでとりあげておく。
なお、地衣類の個別種は ”草花” のページに掲載。たとえばハナゴケはこちら。「花」じゃないけどね。
しだ類
ワラビ、クサソテツなどが典型的なしだ類。名前は知らなくても「ああ、あれね」と分かるはず。日陰を好むので隠花植物というより陰気植物と呼びたい感じ。葉・茎・根を備えており、見た目からは草花といっても問題ないものが多い。ただ花が咲かないから隠花植物なのね、と理解できよう。
しかし見た目だけでは分類に戸惑うものも少なくない。たとえばスギナ。その若いのがツクシだが、外見から「しだ」の仲間だと思いつくことはないだろう。
また、ホソバトウゲシバの見た目はスギゴケに酷似しているし、地面に張り付くように生えるウチワゴケなどは、コケの名がつくが、いずれもシダ植物だ。
こけ類
コケ類に関しても「なんとなく」分かるだろう。倒木や岩、あるいは地面にへばりついて繁殖。シダ類より陰気な感じ。
コケ類も光合成を行なうので立派な植物で、花が咲かない点がシダ類と共通しているが、葉・茎・根の区別がないのが決定的に違う。コケ植物にも根のような部分があるが、これは偽根(仮根)といい体を支える(木や土に固定する)ためのもの。水分を吸収するという根本来の役割はない。そのためコケ類は体の表面全体から水を吸収する仕組みになっている。
地衣類
シダ、コケは「なんとなく」分かっても、地衣類となるとなじみが薄い。そんな名称すら聞いたことがないかもしれない。見た目はコケ、しかし構造は藻類と菌類の共生。と、説明を聞くとさらに分からなくっても無理はない。ハナゴケ、ウメノキゴケなど、コケの名がつく地衣類が多いのは、かつてはコケ類とみなされていたことの証だ。素人が見かけで判断できなくても当然だ。
地衣類の分類については専門家の間でも主張が分かれ、菌類(キノコの仲間)とする説、地衣植として独立させる説などがある。「藻と菌の共生」であるからには植物ではないのだが、ここでは便宜上「隠花植物」に含めた。
ところで、ヘルシンキ大学所属の植物博物館は隠花植物のコレクションにおいて
世界屈指のレベルらしい。