スギゴケに囲まれていると、その全体が「花」に見えないことはない。
Harmaaporonjäkälä
●和名 ハナゴケ (ハナゴケ科ハナゴケ属)
●学名 Cladonia rangiferina
●生育環境 松林の日当たりの良い場所
●開花期 花は咲かない
ハナゴケとはいうものの花は咲かない。コケとはいいながらコケではない。それじゃあなんだというと地衣類である。隠花植物なので、当然花は咲かない。植物というよりむしろ菌類だが、地衣類として別項目を立てるほどを観察していないのでシダ・コケとともに”草花”のページで取り上げる。これ以下、隠花植物の説明テンプレートに「開花期」は載せません。
南部のヘルシンキから極北のラップランドまで、全国に生息。松林の中の開けた場所に群生する。岩地を覆う白っぽいカーペット状で、ハイキングに行けば必ずや目にするだろう。個体をよく見ると、枯れ枝のミニチュアモデルのよう。全長5~10センチ程度。全体がすすけた薄緑だが、フィンランド語名はHarmaa(灰色)としている。それに続くporoはトナカイ、jäkäläが地衣類のこと。その名のとおり、トナカイの餌になる。かつては人間が食していた時期もある。
このほか意外な用途も。
ログキャビンの隙間に埋め込むのである。グラスウールの代わりといえようか。人工物とは異なり、「苔が呼吸する」ので快適らしい。真偽のほどは不明だが、なんとなく納得できる。海外への輸出産物にもなっている。
そういうわけで商品価値が高いため、jäkäläをむやみに採取することはできない。キノコやベリーの扱いとは違うのである。ハナゴケを噛みしめることで水分を補給することもできるが、これば生きるか死ぬかの状況でのサバイバルテクニックの範疇。実際にその必要性に迫られることはあるまい。
日当たりがよく、乾燥した場所に群生する。