左端がシラカンバの幹。右がヤマナラシ。樹皮がなめらかなのがわかる。
わずかな風にも葉が震え、「山を鳴らす」
Haapa
●和名 ヤマナラシ(ヤナギ科ヤマナラシ属)
●学名 Populus tremula
●生育環境 特に場所を選ばす、比較的乾燥した土でも
●特徴
先駆植物(注)の一つで生長も早く、全長30メートルほどになることもある広葉樹。遠目にはシラカンバと混同するかもしれないが、判別ポイントは二つ。
まず葉に着目。そのサイズは3~4センチ、シラカンバのそれよりも円形に近いという外見上の違いもあるが、微風にも枝全体が震えているかのようになびき、パタパタと乾いた音をたてる。haapaの名は、その擬音である。日本名のヤマナラシが「山を鳴らす」ところからきているのと同じ感覚だ。
もう一つは幹。色は薄い灰茶で表面はあくまでなめらか。シラカンバが生長とともに横割れの傷のような模様を見せるのと大きく異なる。
春先の葉や樹液は小動物(昆虫、鳥)を養い、冬季の樹皮はヘラジカやウサギの餌になる。また、木の洞はフクロウやモモンガの巣になったり、一定の地衣はヤマナラシにしか生えないなど、森の生物にとっては最も有益な樹木である。
もちろん人々の生活にも寄与する。日本語の別名はハコヤナギ(箱柳)だが、これは材質が柔らかく加工が簡単なために細工物の材料になったためだ。フィンランドでも古くから加工用木材に利用され、小さいものはマッチや食器、大きなものは船の材料に使われてきた。製紙の原料でもある。
いっぽう、やや困ったこともある。実が熟すと綿毛をまとった種子が大量に巻き散らかされるからだ。その様相は真夏の雪のごとくだが、これに対して少数ながらもアレルギー反応を起こす人がいるので、面白がっているわけにもいかない。
(注)先駆植物
平地から森林に至る過程で、いち早く入り込み勢力を伸ばすもの。樹木としてはほかにマツ、シラカンバなどがある。