前日までとは打って変わった晴天に恵まれた5月1日。ヘルシンキでは今年もヴァップ(Vappu)で賑わった。メーデーとして知られている日だが、それは北欧以外の国でのこと。フィンランドでは春の到来を祝うお祭りの日で、古来より連綿と続くもの。その歴史は1886年に始まったメーデーどころではないのである。フィンランドでもこの日に労働者の祭典=メーデーとしての行事も行われるので、ヴァップ=メーデーと考えている人もいるが、全くの間違い。
そういうメンドクサイ話は別として、この日が近づくと気になるポップスがある。その名もずばり「5月1日」。ビージーズ初期の名曲で邦題は「若葉のころ」。原題はFirst of May。したがって日本語タイトルはまったくの誤訳であるばかりか、歌詞の内容ともまるで関係がない。訳者は原題をThe beginning of May、5月上旬と勘違いしたのだろうか。あるいは5月1日(頃)=新緑が芽吹く=若葉のころ、といった連想から決定したのだろうか。それが結局、ビートルズの「ノルウェーの森」を上回る名訳(超訳)になったと思う。誤訳だからダメ、と言っているわけではないのです。 First of Mayのイメージが「若葉のころ」と完全に一致したのは映画「小さな恋のメロディ」に負うところも大きいだろう。この曲は主人公の少年少女がデートする場面で効果的に使われているのだが、その背景がまさに「若葉のころ」。深い緑に包まれて幼い恋心を告白。そこにドーンとこの歌が拍車をかけるのですね。ああ切ない恋心は「若葉のころ」にぴったりじゃないですか。改めてDVDを見るとススキのような枯れ草も多く、撮影の時期は初秋だろうが、イメージとしてはまさに「若葉のころ」なんですね。 「若葉のころ」は名曲だと思うけど、その歌詞を吟味してみると腑に落ちない点が多い。気持ちが冷めてしまったカップルなのに、「二人の愛は永遠だ」ってのはどういう意味だ? 浮気をしたのはどっちだ? そもそもこれは誰に対して歌っているのだ? 歌詞自体は簡単なので誰でも和訳できるだろうが、つじつまが合わないのです。で、いろいろ考えていたところ、作者であるバリーギブのコメントを発見。この歌のタイトルは愛犬の誕生日にちなんだものだそうだ。こりゃあもう、ひっくり返るしかないよね。