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執筆者の写真tosikaina

万人の権利は法律ではない

更新日:2月24日




 タイトルを読んでも意味がわからないだろうが、勘違いしている人が多いので、はっきり説明しておこう。

 フィンランドの森・自然について、「キノコやベリーなどは誰でも自由に採ることができるという法律がフィンランドにはあります」なんていう紹介文を目にすることがあるけど、それは間違い。フィンランドで発行されている自然ガイドブックの類には、まっさきに「万人の権利は法律ではない!」と書かれている。しかし、そうした注意書きが繰り返されているということは、フィンランドでもこれを法律だと思っている人が多いことの裏返しだろう。となれば、日本人が誤解するのも無理はないかもしれない。ま、慣習法ではあるんだけど、条文化されているわけではない。

万人の権利というのはフィンランド語ではJoka miehen oikeusといい、英語だとこれを直訳してEveryman's rightという。ほかにもいくつかの英訳があるが、それはそうした概念が英語圏にはないためだろう。日本語では「自然享受権」という言い方もあるが、ここではフィンランド語の直訳である「万人の権利」を使って話を進める。

 さて、万人の権利の要旨は以下のとおりである。

認められていること

・自然界のどこでも徒歩、スキー、自転車で入っていい

・キノコ、ベリーは(個人所有地であっても)採取していい

・餌釣り (リール、フライはだめ)

・テント泊

禁止されていること

・生きた木の枝、松ぼっくり等の採取

・コケ、地衣類の採取

・騒音を出すこと

 以上はおおざっぱな例で、それぞれに細目もある。たとえば人の庭や開墾地に入ることは禁止されているし、テントは国立公園内なら指定地のみ、そのほかの場所でも民家が近ければダメ(厳密な距離基準はない)、ごみを捨てるな、といった規制はある。ほとんどは常識の範囲である。

 万人の権利はフィンランド、スウェーデン、ノルウェーにほぼ共通。それぞれの国の人だけでなく、観光客にも保証されている。北欧諸国では太古より誰もが自然の恵みを勝手に享受していたので、万人の権利は当然のことという意識がある。あえて法律にする必要などないのである。まあ、慣習法という意味では法律なんだけど、成文化されたものではない。あえて法律条文に根拠を求めるとすれば、1990年の Rikoslaki(刑法)改正(法律769号)がそれにあたる。つまり、罰則の適用除外規定ということだ。「万人の権利を認める法律」なんてものがあるわけではない。これは「生存権は法律なのか」と考えてみればよい。生存権は日本国憲法で保障された権利だが、それを「法律」といえるのか。専門家の判断をあおぎたいところである。

環境省のHP

http://www.ymparisto.fi/en-US/Nature/Everymans_rights%2827721%29

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