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執筆者の写真tosikaina

警戒色がなぜあるのかは結局わからない?

更新日:3月17日



派手な色のキノコは毒! などという俗説がいまだに流布しているようだが、実際にはそんなことはない。むしろ地味なキノコの方が猛烈な毒を含んでいることの方が多い。「派手な色=毒」の代表はベニテングタケだろうが、別項でも記しているように、このキノコの毒性はたいして強くない。

いっぽう、タマゴタケも派手ではあるが、これは美味なキノコとして知られている。


      地味だけど猛毒を持つシロタマゴテングタケ


ベニテングタケさんにとっては濡れ衣ながら、広く生物界に目を向けると色が派手な動植物が有毒である確立は高いように思える。カエンタケなんて、触るだけでしびれちゃうもんなあ。しかしそれは一般化できるのか? というのが本項の趣旨。

なお、幸いながらにフィンランドには触るだけでかぶれるようなキノコはない。フィンランド解説のサイトで注意を促す記述を見ることがあるが、それはウソ。

さて、こうしたハデハデは 警戒色(警告色)と呼ばれている。「近寄るんじゃねえ」と威嚇して天敵から身を守ると説明されているが、鵜呑みにはできない。キノコを食べるのが人間だけであれば、警戒色にもある程度の意味はある。たまたま食した派手なキノコで食中毒を起こした場合、以後この種は避けようという知恵は伝授されるだろう。


しかし他の動物はどうか。猿や鹿、リスあるいはナメクジなどは人間には有毒なキノコであっても気にせず食べる。ならば、目立つキノコはかえって捕食される可能性が高まるではないか。人間に食べられるのは嫌だけど、他の生物ならいいや、と考えているわけではあるまいに。


また、警戒色が警告になるのかどうかも怪しい。これもまた人間を基準に考えているだけだ。キノコじゃないけど、たとえばオレンジヒキガエルなんかケバケバしくて食べるどころか触りたくもないけど、ヘビもそれを見て驚くとは限らない。ヒトとは感覚が違うのだから、むしろ食指が動いたとしても不思議ではない。


警戒色については上記の逆の解釈もある。

目立つことで獣等に食われる確率を増やし、胞子を獣の体内にとどめてやがて遠方に糞と共に排出、拡散することを狙う、というもの。種子植物ならそうした機能もあるが、キノコにはあてはまらないというのが学説のようだ。つまり、キノコの派手な色は警告にもならないし、進んで身を挺するための手段でもない、ということだ。


さらには地味でも殺人レベルの猛毒キノコなんてのはいくらでもある。もちろん、地味でおいしいものも。そうなると、なぜ警戒色を持つキノコがあるのか。そのうち、一部は毒で一部は食用になるのはなぜか。どうして地味なキノコなのに毒なのか等々は合理的な説明ができない。

で、結局、なぜ警戒色を持つキノコ(生物)が存在するのかは、わからないのである。これはなぜキノコには有毒種と食用種があるのかを説明できないのと同様の謎なのだ。



「われわれの果実が、諸君の口に合うかどうか。-----だが、そんなことは樹木にとって何の係わりがあろう!」(ニーチェ「道徳の系譜」木場深定訳 岩波文庫1964 P9 )。


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