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執筆者の写真tosikaina

妖精の輪か、魔女のいたづらか

更新日:2月24日




 キノコの生え方にはいろいろなタイプがあって、一人ポツンと顔を出す単生、同一種が周囲に散らばる散生、ひとかたまりにまとまって発生する群生などなどがある。これにより種の同定に役立つポイントになることもあるが、その中でちょっと面白いのが菌輪(きんりん)である。

 これはキノコが円を描くように生える現象をさすことば。また、その円自体を菌輪と呼ぶこともあり、菌環という別名もある。菌輪をつくるキノコは50種類くらいあり、シロオオハラタケやシバフタケなどのそれは目にした人もいるかもしれない。ベニテングタケも菌輪を作ることがある。

 さてこの菌輪、その不思議な様相が昔から人目をひいたようで、いろいろな国の民話にとりあげられている。

 英語ではFairy ringと呼ばれ、菌輪は妖精が輪になって踊った痕跡だとされている。そのありさまは19世紀なかごろのイギリスの画家、リチャード・ドイルがメルヘンチックに描いている。ところが同じ現象をフィンランド語ではnoidankehäという。魔女の環状線という意味だ。ところ変われば品変わる。イギリスでは妖精の足跡とされているものが、フィンランドでは魔女のしわざと受け止められているのだ。 noidankehä という言葉は貧困などの悪循環を意味する慣用句でもあるので、sienikehä(キノコの輪)と呼び変えることもある。日本語の菌輪と同じだ。  なお、はっきりとは知らないが、フランスやドイツでも菌輪を魔女のしわざ、といった呼び方をするようだ。そのため、菌輪を見ると幸せになる/不幸になる、と全く正反対のいわれがあるそうなのだが、いったいどっちなのか。はっきりしてもらいたいのである。

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